少女たちの小冬三景 〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 

   

昔は成人の日といや“15日”という不動の祭日であり。
お正月から数えてちょうど半月目、
仕事初めから数えても2週間ほどという、
一段落しやすい日だったはずが、

 「第二月曜にずらして、何かいいことがあるんでしょうか。」

ハッピーマンデーってあんまり御利益を感じないんですよねと、
ハシバミ色の瞳が座る双眸を眇めさせ、
う〜むむと感慨深げにうなって見せる赤毛の美少女。
カウンターに肘を据え、その先の手で小ぶりな顎先を支えるという、
頬杖ついてのおやつタイムという格好は、
見ようによっちゃあ ちょっぴりお行儀が悪かったけれど。
小柄な身には微妙に豊かすぎるお胸を隠しての、下は膝上まで。
その身の前面、覆うよにまとったエプロンが、
小麦粉をあちこちにこびりつけたままなのは、
ほんのさっきまで、カウンターの向こうにある厨房で、
オーナーシェフである五郎兵衛殿を手伝って、
スィーツ作りに奮闘していたことを物語り。
その15日こと、小正月に出す特別メニュー、
小豆粥…にちなんだ田舎じるこや、
ショウガを利かせた金蜜あめ湯に添える予定の、
玄米ビスケットの下ごしらえ、
腕まくりして手伝った後の、今は休憩中だったりし。
こちらは本日のティーセットのお供、
指先で摘まめるサイズという、小ぶりのロールケーキを。
バニラとカカオと抹茶、イチゴから2種類選べる仕様なところ、
お手伝いしたお駄賃代わり、全種4つを盛ってもらっての。
ミルクティーにて一息ついてる、お嬢さんの洩らす不平を要約すれば。

  厳寒の二月半ばまでという長い期間、
  祭日なしで過ごすなんて、その方が憂鬱だ…と言いたいらしく。

 「そうやって“祭日恋し”という言い方をしておるが。」

店内は十分に暖房を利かせているからか、
ロールアップさせたデニムの足元から靴下覗かせ、
そんなボトムに合わせたか、
エプロンの下へまとっているのも、
ボーダーのTシャツと、
そのシャツとはアンサンブルになっている
同柄のカーディガンだけという、随分と大人しくも軽快な装いのお嬢さんなのへ。
だからこそ…ちょっぴり猫背になっての斜めに腰掛けているその姿態の、
頬杖をついてることから しどけなくも落とされた肩の線といい、
丸みを帯びた背中だの腰回りだのの輪郭といい。
乙女ならではな優しくも柔らかな線が、
そりゃあ判りやすくも窺えるのが目に眩しいばかり。

 “しかも、自覚がないから恐ろしい。”

シチさんや久蔵殿という、
金髪に真白い肌をし、玻璃の双眸持つところまでお揃いの、
何とも華やかで判りやすい美人二人と。
ほぼ毎日、お顔を突き合わせて行動をとっているがための落とし穴。
丸ぁるい童顔にぴたりとフィットした、
明るい髪色とか、小ぶりな手とか。
年頃の少女に愛くるしい猫性を丁度よく調和させた、
ふんわりほわほわと甘くもやあらかそうな、
それはそれはキュートな自分の風貌を、
全くの全然 意識していないらしい平八なのが困るというのが、
こちら、八百萬屋ご店主の目下の悩みだったりし。
今もまた、困ったのうとの苦笑を浮かべつつ、
仕込みを終えての片付けも終わったと、
厨房から店側へ戻って来た五郎兵衛殿が続けたは、

 「学校に行くのが、
  毎日そりゃあ楽しくてしょうがない…としか見えぬのだがな。」

 「うう…。///////」

図星を差されたからだろう、持ち上げかけてたティーカップが宙で止まり、
ううと唇を噛みしめてしまった平八であり。
手入れのいい前髪の陰から、
金色染ませた双眸が忙しく瞬いての、それから。
負け惜しみにしては可愛らしいお声が紡いだのが、

 「…だって。
  面白いことばかりが“これでもかーっ”て待っておりますもの。」

おっとり品のいい生徒ばかりの学園は、
右も左も判らぬ帰国子女が飛び込む先としては安全ではあれ、
それが嵩じて…もしかして退屈かもしれないという危惧もあったのにね。

  そこで思わぬ顔触れと出会い、
  気になるお人だった五郎兵衛ともども、
  前世でのっぴきならぬ縁があったことを思い出したから。

その女学園の中でも“ひなげしさん”と呼ばれての人気者。
でもでもあのね? そんなのは ただのおまけ。
アメリカなんていう、海の向こうで生まれたことも何のそのと、
こうまで平和な世界で、しかも多感なお年頃の今、
大好きだった人たちと再会出来たのが、
平八としては幸せで幸せでたまらない。

 「ええ、そうですよ。祭日も平日も、わたしには一緒です。」

だからこそ祭日の配分も偏ってほしくないんです、と。
微妙に憤然とした言いようになったのは、

 “……だって休みの日っていうと。”

お友達との約束取り付け、
流行のお洋服だの、ブーツにバッグに雑貨にコスメ、
街まで繰り出して見に行きたいし、
時間を気にせずの思う存分、
気の置けない顔触れで、あれやこれやとおしゃべりもしたい。

 でもでもね?

土曜日曜ともなれば、午前の内から店は立て込み、
いい年頃の熟年美女も、ずんと遠くから多数ご来店となる展開が、
相変わらず気になってもしまうので、

 “ゴロさんがもう少し自覚してくれたら いいんですのにっ。”

それはそれは瑞々しい頬、真ん丸に膨らませ、
いい男としての、それもまた心得でしょうに、もうと。
それは頼もしくって優しい、誰へも自慢の許婚者さんを前にして。
いかにも複雑なお年頃のヲトメらしい、微妙に理不尽な憤懣、
お胸の下にて転がしてみたりして……。
 
       
       ◇◇◇



始業式こそ7日の金曜に設けられていたものの、
すぐさま、その“ネオ成人の日”を含む3連休へと突入したので、
三学期は、実質まだ4日ほどしか経過してはなく。
三年生の中には外部受験をなさるお姉様がたもおいでなため、
授業にはほとんど出ておいでにならなくなり。
そのため、学園の中は微妙に閑散とし、
最も寒い時機の到来であることも相俟って、
何とはなし、物寂しい気配が垂れ込めもする……のだが。

 「だからといって、猫背になったり身を縮めたりしておれば、
  代謝も落ちて、寒さに負けての感冒を拾いやすくもなるからな。」

特に空気の乾燥は、
風邪だのインフルエンザ系ウィルスだのの繁殖を増長させるから。
加湿器を使うなり絞ったタオルを室内に干すなりして、
湿度を保つよう心掛けるんだぞと。
毎年毎年恒例の、
風邪を拾わぬための用心を、片っ端から説いて下さるありがたさ。
手洗いとうがいの励行とか、
苦手でもみかんを食べて、ビタミンを摂取することなどなどと、
出来るだけ判りやすい言いようをして下さる、
掛かり付けの医師殿の仰せへ、

 「……。(頷)」

うるさいなぁとか何とかと、生意気な反駁もせずの、
ただただ こっくりこと頷くところは、
こちらさんもまた幼いころと変わらぬ素直さではあるのだが。

 「……うん、異状は無いな。」

白が基調のそれは清潔な診察室は、暖房も十分に効いていて。
昼下がりの明るさをその縁に弾けさせている窓辺の目映さといい、
まだまだ遠いはずな春をも思わす長閑な趣き。
当人が両手がかりでたくし上げたシャツの下、
時折 深呼吸させもって、聴診器での診察を続けていた兵庫せんせえが。
ひと通りを診た上で、
身を放すと傍らのデスクに開いていたファイルへと、
何行かの書き込みをさらさらと手慣れた様子で書き足して。

 「貧血を起こす頻度も随分と落ちたようだしな。」

昔はといや、丁度季節の節目と重なる始業式の最中なんぞに、
そりゃあもう頻繁に立ち眩みを起こしていたものが。
中等部へ上がってからこっちは随分と落ち着き、
そのまま高等部に上がってあの学園へと通い出してからは、
一度も倒れたことはないとあって。

 “となると、
  バレエを続けて来た効用ばかりではないのだろうな。”

親しいお友達が出来、そんな彼女らとの交際も深まると同時、
窘められる機会が増えての効果、
好き嫌いが多少は落ち着いたのが、効いているのやも知れぬと。
ファイルを閉じつつ、札付きの偏食王女だったお嬢様をあらためて見やれば。
金の綿毛も、それを冠した透けるような白い頬した横顔も、
白皙の美少女と呼んで差し支えなかろう、
端麗玲瓏、それは麗しい造作であるのへと、

 「………、」

ついつい見惚れかかった榊せんせえだったのだけれど。
少ぉしうつむいているばかりだったそんな久蔵が、

 「〜〜〜〜〜。」
 「  …判ったから貸してみ。」

ぶちキレてしまう前にと助け舟を出してやる。
聴診のためにと、はだけた上でたくし上げてた胸元の、
パールがかったサテン地を透かす、オーガンジーのフリルも可憐な。
どちらかといや ささやかな隆起の2つの丘を、
健気にもつないでいた細いリボンがほどけたらしく。
単なる飾りで、そのままでも機能的には支障がないらしいそれ、
だらしがないのでと、
自分で もしょもしょ何とかしようと頑張ってたらしいのだが、
何度結んでも見事なほどに縦結びになってしまうところはお約束。

 「ほんにお前は、器用なのだか不器用なんだか。」

前世とは随分とお膳立ての異なる生まれ、
太刀を振るう必要もない身だったせいだろか、
ピアノのみならずバイオリンまで見事に弾きこなし、
裁縫や編み物、料理までこなせるところへ、こそりと驚かされたほどだったのに。
それにしちゃあ、こういう他愛のないことが どうしてなのだかこなせない。
テグスとビーズだけで、雪だるまやキティの立体的なチャームが作れるというに、
靴紐がいつも縦結びになるの、
中等部に上がってやっと直ったのは、結構有名な話だったりし。
そのあまりの落差が、
周囲の人々には不思議なことであるのが判らんではないながら、
兵庫からすれば、それは“相変わらず”なことだったから。
誰に教わるでもなく超振動の斬撃を身につけ、
天才的な身ごなしで、二本の太刀を振るった死胡蝶は、だが、
それ以外は何をやらせてもからっきしだったので。
極端から極端という振り幅で、
とことん不器用なところも持ち合わせているのが、
自分へは ちいとも不思議なことじゃないし。
そうであることが“特別”のような気がし、
何だかくすぐったいと思いもする…のではあったれど。

 「……久蔵。」
 「?」
 「お前、このところ下着がどんどんと派手になっとらんか?」
 「??」

さほど胸の隆起が目立たないのでと、
ずぼらをし、いつまでもブラを付けぬのを。
それではよくないからとの指導をしたのは…他でもない兵庫だったのだが。
当初は窮屈だの何だのと、視線による文句たれたれの装着で、(視線て…)

バレエのレッスンとの兼ね合いもあってのこと、
地味なスポーツブラばかりを愛用していたはずが。
高校に上がってからこっち、
急にリボンだフリルだに飾られた代物をつけるようになり。
胸の下半分しか覆わぬほどカップが小さくなったと同時、
ピンクや黒なんてのがお目見えしだし。
そちらも小さくなったパンティとのお揃い、
脇が細い細いリボンで編み上げになってるデザインのとか、
細い組紐が3本ほどで1組になって肩のストラップになってたり、
いやに煽情的な金の金具が以下同文になってたりという、
微妙にとんでもない型のをばかり、
検診のたびお披露目してくれるようになったお嬢さんであったりし。

 「今日のこれも、結構派手なんじゃないかと思うのだがな。」
 「???」

そぉっかなぁと、言われて気づいたような順番で、
自分でも懐ろを見下ろして見せる、ここも相変わらずに素ボケなお嬢さん。
自分の指先込みで眺められるのは、何だか気恥ずかしくなって、
何とか真っ直ぐ結べたのを幸い、そそくさと手を離した兵庫だったものの、

 「…大きく見える。」
 「お?」

イマ、ナンテ、イイマシタカと、
訊き返しのニュアンスも含めての“お?”へと、

 「この形だと、ない胸も少しは胸に見える。」
 「  ……ほほぉ。」

寄せて上げるなんてのはもう古い。
実は小さめの底上げパッドが入ってることのみならず、
上半分をバランスよく空け、鎖骨の眩しさ込みで、
胸元を魅惑のゾーンに仕立てるマジックが、
今日びの下着には当たり前に仕込まれてあり。
特別な恩恵で目に出来る殿方へ…という働きかけじゃあなく、
身につけるお嬢様がた自身への贈り物。
こんなに魅力的なんですよ、あなたって…という“うっとり”をくれる、
まとう本人へも ささやかな満足をくれる代物であったりするらしく。

 “……まあ確かに。”

小さなブラとスキャンティのアンサンブルは、
その対比により、ウエストが絞まって見え、背中のしなやかさを強調しもするし。
パンティの丈の短さは、胸とブラの対比と同様、
さほどふくよかじゃあないお尻の丸みを、なのに愛らしくも演出し、
ついでに足を長く見せもする。
ルミナスピンクだの黒だのという濃い色は肌を白く際立たせるだろし、
フリフリの服には抵抗があっても、誰にも見せないところなら いっかと、
ついつい大胆になるのも判らんではない……のではあるが、

 「……ただな。俺は木石だと思っとらんか、お前。」
 「????」

今日だって、
ドレープの利いたゆったりチェニックタイプのブラウスを、
そりゃあ無造作にたくしあげた下から現れたのが“コレ”だったワケで。
さすがに診療中は、
医者と患者、若しくは保護対象の目下の少女という感覚へ、
しっかと割り切れてもいるけれど。
何ともないな、よかったよかったと気が緩むと同時、
すぐの目の前にあるのが、
こういった…いかにもガーリーで見目よい姿態を演出する武装を決めた、
伸び伸びとし、肌も瑞々しいばかりなお嬢さんの、
魅惑的な肢体 with 下着オンリーだったりした日にゃあ。
どこぞの警部補よりはお若いせんせえ、
それなりにどぎまぎだって致しますと言いたいようで。

 「お前だって昔は………。」

一応は男だったのだからして、
こういう煽情的な存在が間近に来ればどうなるかくらいは覚えておろうと。
訊きかかった口調が、ふっと止まってしまったのは、

 “昔は…って、こやつ、女を買うとかしてたんだっけか?”

自慢じゃないが、付き合いは長かった。
戦さの間の何年かとその後の10年とという随分な長さを、
好むと好まざるに関わらずという環境だったからだとはいえ、
それでも、目と鼻の先という位置に互いを置いていたには違いなく。
だが、それにしては…久蔵のそっちの部分の記憶がこちらにも一切ないと、
今更ながらに気がついた。
うわ〜、そこまで剣の鬼だったかこやつと感心する一方で、

 “だからって、こういう敵討ちを構えるか、この野郎。”

男の生理を知らぬまま、ここまで育ってもなお、
それは無邪気に“お兄さん、お兄さん”と擦り寄って来る日が来ようとは。
思わぬ落とし穴に今頃気づいて、
こ〜れは困ったとしょっぱそうなお顔になった兵庫せんせえだったりする。

 「兵庫?」
 「ん? ああ、いや。
  ほれ、新しい猫じゃらしだぞ? くうの好きな鈴つきだ。」
 「………vv ///////」

       


      ◇◇◇



元はと言えばふかふかした毛並み。
それを紡いだ細糸を、針先にからめての一目一目と拾い上げ、
根気よく要領よく、キツクもしない緩めもしないで ちむちむと。
ところどこでは大きな安全ピンへと目を預けての交差させたり、
裏編みを交えてのアクセントを織り出したり。
糸色を変えてまでという、ノルディックセーターもどきのは、
まだまだちょっと手に余るものの、

 “のんびりと構えてたら、あっと言う間ですものね。”

洋服のリフォームが大好きだし、編み物は母から教わったため、
ヘイさんや久蔵殿のようにお菓子をほいほいと焼けない代わり、
編み物や裁縫には、結構自信もある七郎次。
昨年はうっかりしていて間に合わなんだが、
今年は何としてでもと、手編みのセーターに取り組んでおいでの白百合さんで。
そう、あと1カ月を切ったところの、二月の告白の日に向けて、
愛しの誰か様へという、大物を編み上げようとの決意をしたまではよかったが、

 「………♪」
 「あ、これ。イオ、いけません。」

籠から飛び出し足元をころころと、
真ん丸に巻き直した毛糸玉が転げていったのへ。
小さなアビシニアンが、
後足立ちになってのバネをため、果敢にもえいやっと飛び掛かるものだから。
せっかく調子よく進めていたものが、
不意にくんっと引き留められたり、余計な力が掛かったり。
それより何より、

 「にゃあぁうっ。」
 「ああほら、爪が取れなくなったのでしょう?」

まだまだ幼い仔猫ゆえ、遊びへの手加減も不十分なのか。
がっしと捕まえた毛糸玉から、自身の爪が抜けなくなり、
情けない声で“たしゅけて〜”という悲鳴を上げたりもするがため。
そっちからも手が止まらざるを得なかったりし。
やれやれと編み針を置き、お膝に掛けていたブランケットを退けると、
ソファーから立って行って。
窓辺の陽だまり、とうとう転げた仔猫を毛糸ごと抱え上げ、
どれと丁寧に爪を外してやる七郎次で。

 「痛かったでしょうに、どうしてやんちゃを辞めないのかしらね。」

こうしてほどいてやるのも、実のところ今日が初めてじゃあなくて。
やっと外れた厄介な大玉、
そのまま籠へと戻されるのを見送った金茶の瞳が、
やや残念そうだったのが可笑しくて。
これは懲りてないなと、七郎次の側こそ思い知る。

 “だからって、相手をしてやらぬ訳にも行かないし。”

お出掛けが多い自分へと、それでも懐いてくれている小さな家族。
なので、せめて在宅中は一緒にいてやろうというのが基本方針な、
草野さんチのお嬢様、ではあるのだが。

  ♪♪♪♪♪〜♪♪

不意に鳴り出した携帯の着メロ。
あっと表情が弾かれて、大急ぎでソファーへと駆け戻る。
メールですよとの電子音だったが、それでもね。
差し伸べられた手の残像や残り香が、
もしやして居残ってるような気がするものだから。
それより何より、こちらへと想いを向けてくだすったという事実が嬉しくて。
一刻も早くとモバイルへ飛びついたものの、

 「………。////////」

開けるのが惜しくなるなんてやっぱり変かな。
でもでも、だって・あのね?
勘兵衛様のメールって、いつもそりゃあ短い一文なんだもの。
あっと言う間に撫でてしまえて、
どんなに慎重に咬み砕いても、ものの1分で全部覚えてしまえるほど。
何か約束事とかしてたかな?
待ち合わせの約束とかあったかな?
ずんと先の話、でもでも予定が入ってダメというのは、
今のところは無いはずで。
そうよ、バレンタインデーの約束だってまだだのに。
それとも、節分に警視庁で何か余興でもやるのかな?
それを観に来いっていうお知らせかしら?
ドキドキしながら、それでも そおと、胸元へと伏せてた携帯を引きはがし、
そのまま…小さな点滅を表へ確かめてから、カードのように薄い蓋を開けば。
暗証パスがないと開けられぬとしておいた、
特別なお人からのメールが届いており。

  「  ………っ。/////////」

あらまあと、口許がふわりとほどけ。
それを隠し掛かった白い手が、
モヘアのセーター越し、胸元に伏せられて。
室内をキョロキョロ見回し、ああと思い出しての改めて、
携帯のデジタル表示、時刻から切り替えたカレンダー表示を見直すと。
ますますと口元や頬が甘くほころぶの、
見る人が見ればそれは判りやすかったに違いない。
いつの間にやら、カーペットが敷かれた床へと座り込んでたお嬢様で、
そのお膝へと寄って来た小さな家人をひょいと抱き上げ、
みゃあ?と訊くのへ、うふふと微笑い。

 「内緒。イオにだって教えたげないvv」

お家でミニを履いてると顰蹙でも買うものか、
マキシのスカートが伏せた椿を思わすように、ふわり広がったそのまんま、
嬉しさ一杯でと、仔猫へとりあえず惚気を訊いてもらっているお嬢様だったが。
誰にも内緒とした幸せなメール、
数分と経たぬうち、
誰かさんと誰かさんへは報告のメールを打ってるに違いないと思う人、
きっと山ほどおいででしょうねぇ。
(くすすvv)

       

   〜どさくさ・どっとはらい〜  11.01.14.


  *お嬢さんたちの金曜の午後をそれぞれに。
   久蔵殿の下着ネタは、遠縁の姪っ子の実話半分。
   今時は未成年でも某通販誌でのお買い物はするらしい。

    それはさておき
    (兵庫さん頑張って。ゴロさんなら判ってくれるぞ・苦笑)

   あの仕事の鬼が一体何を言って来たやら。
   シチさん、今にもどっかへ飛び立ってしまいそうですが。
   年末とお正月に休めなかった分を、
   今頃休めそうなので、
   明日の土曜にどこかで逢おうとか?
   バレンタインデーのコンサートか何かのチケットを手に入れたとか?
   何にせよ、ぬか喜びさせといて、ギリですっぽかさないでね、勘兵衛様。

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